トイ・ストーリー5/ブレイズ×ボニー
※50年代生まれのおもちゃの発言として、やや差別的なセリフがあります。
ボニーは今10歳。おもちゃを手に取ることも減ってきたけど、まだまだ遊んでくれる。最近はアタシに、ドラマで見たようなかっこいいセリフやアクションをさせてくれる。でもパパやママが部屋に入ってくると慌ててやめてしまうし、遊んだあとは枕に顔を埋めてキャーキャー言いながら足をバタバタさせている。
もともとボニーは変わった子だけど、これはなんというか、奇行っぽい。
「嬉しいけど、なんなんだろうね?」
「……そうね、こうじゃないかしらと思うことはあるんだけど、私の口からは言えないわ」
手作りのドーリーは、一番赤ちゃんの頃からボニーを知っている。彼女ならわかるかと尋ねてみれば、布のお人形は微笑んでうつむいた。
「それって、ボニーがジェシーにブレイズを投影してるってこと?」
「カレン!」
切り込んできたのはナイフに目鼻のカレン・ビバリーだった。
「カレンったら、そういうことは本人以外が言ってはいけないのよ」
「そうなの? ボニーがブレイズを好きだって?」
「え? ボニーもブレイズも女の子でしょ?」
「ちょっと、おばあちゃん!」
充電ポートから傷の増えたリリーパッドが叫んだ。
「これ読んで、ちょっとは勉強して」
ベッドに這い上がって画面を覗き込む。そのページのタイトルは、『LGBTQIAの親に知ってほしい100のこと(LGBTQIAの親じゃなくても)』だった。読むと余計わからないことが出てくるけど、リリーはその都度更に検索して教えてくれる。
「大事なのは、ボニーがいきなり変わったわけじゃないっていうこと。ただ新しくわかったことがあるだけ」
そうは言っても恋愛を知る頃の女の子は、アタシを手放してしまう。アタシが不安になっていると、帰ってきたボニーは案の定アタシたちを棚の上に上げてこう言った。
「これからおもちゃは大事に“飾る”の。お姉さんだから」
ボニーがそう決めたのなら、抗うことはできない。アタシたちは棚の上にすまし顔で座っていることしかできない。そうしてぼんやりしていると、自転車の音がして、ボニーが「ブレイズだ!」と部屋を飛び出していった。近頃あの子は自転車でここと牧場を行き来できるようになった。
ブレイズはいつものようにひょいと棚からアタシを取り上げる。ボニーが「あっ」と声を上げる。
「どうしたの?」
「その、飾ってたの……もうおもちゃは……」
「え? どうして?」
「もう10歳だから……」
「なんで10歳?」
「だって、あたし……会った時のブレイズと同じ歳になったよ」
ボニーはもじもじとブレイズの顔を見ては、目を逸らす。そうか、ボニーはブレイズに子供っぽいと思われたくないんだ。でもブレイズには幸いにして伝わらなかったようで、バズを手渡されてなし崩し的に遊び始める。でもまだお姉さんが何をするのかはわかっていないんだ。
「わたしはボニーといる時、少し子どもに戻れてホッとするけどなあ」
ブレイズがボニーを抱きしめて言った。
「ずっと一緒にいたいって気持ちは多分おなじだよ」
ボニーはブレイズが好き。ブレイズもボニーが好き。今はそれでいいんだ、とわかってアタシはひっそりと安心した。そしてアタシが本当に棚の飾りになっても、この二人がずっとそうであるように、願った。
