面と点
腰から双剣を吊って、ウァレフォルは眉をひそめた。何か違和感がある。靴を左右逆に履いているような。試しに抜いて、二本とも軽く振ってみる。やっぱり、とまだベッドにいる男を睨んだ。
「おい、くだらん悪戯をするな」
「もうバレちまったか」
「気付かないわけがないだろう」
爪も牙も持たないヴィータ体にとって、武器とはその代わりだ。腕の延長でいくつもの肉を切り裂いてきたその左右を入れ換えられて、気がつかないわけがなかった。
「先に寝る方が悪い。寂しい夜の退屈しのぎさ」
そう嘯きながらイポスもまた、すぐに気がつかれることはわかっていた。己の両肩に左右対称の傷をつけた刃がどんなものか、まじまじと見たくなって。そうして盗み見る機会を供する寝顔にほんの少しばかり苛立っただけだ。
「十分楽しませてやっただろう?」
ウァレフォルは再びベッドに乗り上げて、その刃が皮膚の表面につけた裂傷を撫でる。大振りの刃で叩きつけるようにして、“面”で打ち付けながらも切り裂いた傷。
「クク、そうだがな……。おっと、忘れ物だぜ」
対抗するように右目の瞼を撫でて、イポスはベッドの枕元に落ちていた眼帯を手渡した。正確に“点”を貫いた傷を隠してしまう小さな布を。突剣は、部屋のすみに静かに立てかけられていた。
正反対な傷をなぞりながらも、そのいずれもが暴力である時点で、互いが分かちがたく似た者同士であることを二人はよくわかっていた。だから、求めるものがひとたび合致すれば、二人してそれをまぎらわせた。
今、すまし顔で身支度を整える二人には、端正な面貌を快楽に崩していた名残はどこにもない。首筋や内腿についた鬱血の点も、すぐに消えてなくなるだろう。
それきりでも構わない。二人とも過ぎ去った一点にこだわりはしない。しかしその後で、また面と面が交わることを予感していた。
